Problem First 実現のための
「課題構造化プロセス」
「なんとなく不便だ」という感情を、「エンジニアリング可能な要件」に変換するための 具体的なフローをご紹介します。
ゴールはAI導入ではなく、「真のボトルネックを特定し、投資対効果(ROI)が見合うか判定すること」です。
感情の定量化(Pain Audit)
感情・不満
「忙しい」「大変」
数値データ
「週3回」「45分」
現場からは「忙しい」「大変だ」という感情(定性データ)しか出てきません。 これを数値(定量データ)に変換します。
ヒアリングシートの具体例
- •その作業は週に何回発生しますか?
- •1回あたり何分かかりますか?
- •その作業中、他のことは考えられますか?(思考の占有度)
- •ミスをした時のリスクはどれくらいですか?(心理的負担)
「Why」の深掘り(真因特定)
日報を書くのが面倒で提出しない
書くのに30分かかるから
内容を思い出すのに頭を使うから
情報の整理ができていない
表面的な課題に対してAIを入れると失敗します。「なぜその作業が発生しているのか?」を突き止めます。
悪いAI活用
「日報を自動生成するボタンを作る」
(元ネタがないので精度が低い)
良いAI活用
「箇条書きメモを構造化するツールを作る」
(事実を整理しアクションを提案)
解決策の仕分け(トリアージ)
定型業務
計算、転記、承認フロー
非定型・曖昧
要約、案出し、翻訳
低頻度・複雑
年1回の特殊処理など
ここが最も重要です。「それは本当にAI(LLM)を使うべきか?」を冷徹に判断します。 AIは「嘘(ハルシネーション)」をつくリスクがあるため、ルールが決まっている業務はRPAやiPaaSに任せるべきです。
成功定義(Definition of Done)
Current State
Target State
開発を始める前に、「何をもって解決としたか」を数字で合意します。 これをしないと、「AIの回答が気に入らない」という感覚的な理由でプロジェクトが頓挫します。
合意形成のテンプレート
「現在、[月間20時間] かかっている [問い合わせ一次対応] を、 AI導入によって [月間5時間] まで削減する。
ただし、回答の精度は [80%(要人間確認)] で良しとし、 その代わり [レスポンス速度を1時間以内] にすることを優先する。」
このフローを経るメリット
「魔法の杖」への期待値調整
AIは万能ではないと理解し、AIが得意な領域(STEP 3)だけにリソースを集中できます。
失敗の回避
「作ったけれど誰も使わない」事態は真因特定(STEP 2)不足から起こります。ここを固めて「刺さる」ツールを作ります。
内製化への布石
この思考プロセス自体が、後の「自走支援」において、組織に残すべき最も重要なスキルセットになります。